個人的に2022年の大きな出来事はサビーカスを知ったことだ。
アラビアン・ダンスがきっかけだったと思う。
この曲はいかにもといった感じで、ちょっと俗っぽくもあるが懐かしさも感じる。
この曲に抵抗感を覚えなくなったのは年のせいかもしれない。
とはいえ、この曲を弾きこなすのは容易なことでないことは想像に難くない。
それをサビーカスは正確無比に弾き進んで行く。
テンポを刻む確かな推進力が並大抵の力量ではないことを物語っている。
右手の軽くしなやかな指の動きは、わたしが夢想していたそのものだった。
以来、彼の動画を探し貪るように見た。
「今、サビーカスにはまってる人間はそういないぞ。」そう友人に笑われた。
じつは、わたしはフラメンコが苦手だったのだ。
元来、民族音楽はダメで、フラメンコも、あのアクというか泥臭さが嫌だった。
実際にグラナダとマドリーに住み、接する機会もあったし、フラメンキスタの友人もいたのに。
だが、サビーカスからフラメンコのアクはいっさい感じられない。
泥臭さとは無縁の演奏で、ラスゲアードですら丁寧。
丁寧で正確無比という点ではクラシックの奏者以上かもしれない。
そして、なんといっても素晴らしいのは動きを含めた右手の美しさである。(とは言うものの左手も相当に凄いのだが)
美しさを感じる右手を持つギタリストは残念ながら極々少数なのだ。
わたしがクラシックギターと関わって以来、私の中でのギタリストNo.1はずっとアンドレス・セゴビアであり、これは変わらないのかもしれないと思っていた。
2022年、No.1の座はサビーカスに代わった。(あくまで個人的ランキングだよ、笑)
少なくとも、ギターを弾くという点において、サビーカスはセゴビアを凌駕している。
サビーカスが終生を通じてあのテクニックを維持したのに対し、晩年のセゴビアのテクニックの衰えは顕著である。
そうして、サビーカスの動画を見続けるうちに、ある重要な発見をすることになる。