Jorge caballero
PA奏法を思いついてから、この奏法で弾いている奏者がいるものか探してみた。
個人的にびっくりしたのは、最初にヒットしたのがなんと日本人ギタリストの猪居亜美さんだったこと。
次に目についたのがパオラ・エルモシン(Paola hermosin)、アンダルシア訛りバリバリのスペイン女性。
共に女性でフォークギターも弾く。
だから、伝統奏法の呪縛に囚われることがなかったのかもしれない。
ただ、わたしが思い描くPA奏法とは微妙に異なる。
ところがなんと、ピタリと一致する奏者がいた!
ホルヘ・カバジェーロ(Jorg Caballero)である。
じつは数年前、わたしと細川さんは次の時代を担う最有力候補は
ジェリル・レフィック・カヤ(Celir Refik Kaya)だと考えていた。
彼の演奏スタイルは端正な正統派で、文句のつけようがなかった。
しかし、ホルヘ・カバジェーロの登場が全てを一掃した。
彼の弾く Villa Lobos etude 1 を見て聴いて欲しい。
この曲はセゴビアも弾いていて動画も見ることができる。
セゴビアはこの曲をキッチリ見事に仕上げている。
セゴビアのm,aの動きは完璧だと思っていた。
しかし、カバジェーロを見た後ではセゴビアのm,aの動きは訓練の賜物であることが分かる。
カバジェーロのm,aの動きは、言ってみれば生まれつき動くのだと言わんばかりの凄まじさである。
同じことがトレモロについても言える。
わたしの知ってるギタリストが、
「今アランブラを弾けるかと言われれば弾けない。
しかし、一週間もあれば弾いてみせる。」と言っていた。
同様の事を超有名ギタリストも言っていることを人づてに知った。
ギタリストにとってトレモロというのはけっこう鬼門であるようだ。
わたしの大好きなギタリストにノラ・ブッシュマン(Nora Buschmann)がいて、
彼女が Campanas del Alba を弾いている。
彼女はこの曲を完璧に弾いているが、彼女のトレモロ時の薬指の動きにカバジェーロのような力強さ、自然さは感じられない。
マリア・エステル・グスマン(Maria Esther Guzman)の右手は変則的で、正直、個人的には疑問に思っていた。しかし、彼女のあの右手のフォームにも意味はあったのだ。
彼女が Recuerdos de la Alhambra を好んで弾いていたのはトレモロに自信があったからにちがいない。
数年前にはカヤとかノラのような正統派のギタリストがいなくなってきていることを嘆いていた。今では時代に取り残されるところだったと安堵している。
理解されやすいようにPA奏法と名付けたが、カバジェーロ自身がカバジェーロ奏法とでも名打って、この奏法を世界に拡げて欲しいのだが、残念なことに、彼には自分が特別な画期的なことをしているという自覚はないようだ。これは本当に歯がゆい限りである。
なぜならば、この奏法が普及すれば、クラシック奏者がテクニックではなくその音楽で評価される時代が必ずやって来ると思うからだ。