いつだって閃きというのは突如としてやって来る。
今回は朝だった。
"トーレスは単に表板が破れないように力木で補強しただけなんじゃないか?”
瞬時に確信した。
考えてみればそうだ。
あの低音というのは普通に力木を配していたら絶対に出ない。
低音を出す一番の方法は表板をでき得る限り柔らかくすることだ。
力木は表板を固くし、音程を上げる。
すべて氷解した。
どうしても力木を中心に見ていた。
わたしは20世紀という眼鏡を外せなかった。
だから、トーレスが理解できなかった。
3ミリの厚さしかない力木で絶対的な剛性など望めるはずはない。
そうじゃない、3ミリであれば割れは防げるし、板の自然な振幅を妨げることもない。
トーレスにおいて力木とは、何よりもまず補強材として解釈すべきだった。
スッキリした。
なんといってもトーレスは最大の克服すべき課題だったから。
満足、充足感を感じる。